基本的には地域密着型のビジネスである塾の経営は、店舗周辺の環境の影響を大きく受けます。例えば近くに駅ができたり、大きな企業が誘致されたり、商業施設ができるなどの変化です。
また、誘致企業が撤退したり、商業施設がなくなったりとネガティブな変化もあり得ます。
新規開業で失敗しないために気を付けるべき点や、塾運営のポイントを紹介しながら、塾経営の成功へのヒントをお伝えします。
1.新規開業で気をつけるべき点:塾や教室の運営
ビジネスプランの策定
塾に限った話ではないですが、ビジネスプランを明確にすることが大切です。
まず、お金に関する部分ですが、塾の運営にかかる費用を明確にして、最低限必要な月間売上を算出しましょう。時期的な売り上げの変動もありますので、それらを推測して毎月の売上目標を設定していきましょう。
プラン策定の際には、地域内で競合となる他塾を分析し、差別化できる部分が無いかなど十分にビジネスプランを練りましょう。生徒に対するフォロー体制なども含めてです。
次に開業資金やその調達方法についてですが、開業資金は開業する塾の形態や規模により変わります。
そもそも、初めて開業する場合は、地元の金融機関に融資を頼んでも、実績や信頼がないため、融資を受けられる可能性は限りなく低いです。
そのため、物件を借りて内装工事を行うような、それなりの規模の塾開業を考えていて、開業資金が必要になる場合は、日本政策金融公庫や制度融資の利用を検討することをおすすめします。
次に、小さく始めたい場合には、最初は自宅の一部を教室として利用するのも手です。 そうすれば物件の賃貸費用もかかりませんし、工事をする必要もないため安く抑えられます。また、自分が講師になれば人件費も抑えられますので、比較的すぐ収益化できます。
適切な立地選び
塾の規模に応じた店舗の選定が必要です。また教育機関ということもあり、通学対象者の年齢にも考慮した選定が必要です。
例えば、小学生が通う塾であれば、何らかの危険が無いかどうかが強く影響します。これは塾までの経路にある危険であったり、塾がある地域の雰囲気であったりと様々な観点からのものです。
また、駅から近かったり、商業施設の近くであったり、大型マンションの近くなど、通塾生にとって交通アクセスの良い場所を選びましょう。塾が扱う内容にもよりますが、必ずしも駅近くが良いとは限りませんし、アクセスの観点では、地域によっては駐車場・駐輪場の有無がそのまま集客に影響を与えたりもします。
法律や規制の確認
まず、最初に取り掛かるべきは関係しそうな法規制について調べてみましょう。世の中には普通に生活したり、サービスを受ける側の時には知り得ない様々な規制があります。
開業する塾や教育機関の形態や規模により、関連する法律や規制が変わりますので、しっかりと確認しましょう。例えば特定商取引法や消費者契約法、建築基準法における用途地域の問題や消防法による消防設備の設置などです。
■関連記事:塾や教室などスクールが考慮すべき特定商取引法と消費者契約法
次に開業時に行う申請は法人や個人、従業員の雇用の有無などで変わりますので列挙します。
【法人の場合】
- 法人設立届出書
- 青色申告承認申請書(青色申告する場合)
- 給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇う場合)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
【個人の場合】
- 開業届出書
- 青色申告承認申請書(青色申告する場合)
- 給与支払事務所等の開設届出書(従業員を雇う場合)
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書兼納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出書
2.塾運営のポイント:教室経営における成功の秘訣
効果的な集客方法の選定
店舗型の塾の場合は、地域に合った広告戦略を取ることが重要です。地域紙や媒体など地域により様々ですので、先ずは媒体候補のピックアップから始めましょう。
そして、開業のタイミングは一度しかありませんので、この機会を最大限に利用し、例えば入会金無料やお友達紹介割引などのオープン特別キャンペーンを活用し問い合わせに繋げましょう。
塾の日々の活動や様子などはSNSやWebサイトを通じて発信することをおすすめします。継続的に情報発信することで、周辺地域での認知を上げることができます。
カリキュラムや教材など運営面での工夫や差別化
塾の方針や対象生徒像にもよりますが、生徒のニーズに合わせたカリキュラム設計は生徒から良い反応を得やすいです。しかし、その反面、塾側の手間が増える可能性がありますし、講師依存が強く出てしまう可能性があるところが注意点です。
分かりやすく効果的な教材の選定も重要です。例えばプリスクールなどの英語関連の場合は、海外で使用しているテキストやカリキュラムを導入するなど独自的なカリキュラムになる傾向がありますが、受験塾などの場合は教材が固定化していますので、それ以外の部分で差をつける必要があります。
学習支援システムなどのツールの導入も良いです。生徒は動画や音声、補足資料などを見ながら、宿題やワークに取り組むことができますし、保護者向けの資料の格納もできます。手厚い支援体制のアピールに繋がる上に、塾側での資料の用意や配布、紛失にかかる手間も減らすことができ一石二鳥です。
次に指導スタイル面での工夫や差別化ですが、個別指導や集団指導のどちらにするかは、塾経営や生徒集めに大きく影響します。
例えば大手中学受験塾の場合、学年が上がるにつれて、勉強量や模試の回数が増え、学生にとっては厳しくなっていきます。それに耐えられないと判断した家庭は転塾を選択する場合も少なくありません。
大手塾は集団型が多いので、弱点科目強化などの目的で個別指導を求めての転塾の可能性もあります。転塾と言ってもネガティブなものだけではありませんので、開業したばかりの塾や小規模な塾でも工夫次第で生徒を獲得するチャンスはたくさんあります。
スタッフの採用や育成
塾の質や評判は、講師の質の高さで決まると言っても過言ではありません。どの塾も質の高い講師を採用したいと思っています。
しかし、近年は個別指導塾が増えた背景や、仕事としての人気面で、ひと昔前と比較し、塾講師のアルバイトを選択する人材が減っていることもあり、塾講師の採用が難しくなっています。
マス広告やチラシなどの一般的な募集方法も悪いわけではありませんが、あまり高い効果は期待できないのが現実です。
また、卒業生や紹介経由ではマス広告などと比較し、良い先生やその予備軍となる人材を獲得できる可能性が高いですが、講師候補人口が少ない現在ではそれもなかなか難しく、地道に育成していくのが確実な方法になります。
そして、せっかく育成したとしても、塾講師やスタッフ人材の流動性は高く、育成しても辞めてしまう可能性があります。そのため、講師やスタッフのモチベーション向上策や評価制度の導入といった仕組みの強化も重要になってきます。
3.継続的な経営改善:塾と教室の効果的な運営戦略
定期的な経営分析
売上や生徒数の推移を分析しましょう。塾は入塾や卒業を含んだ退塾のタイミングが決まっていますので、その時期は生徒数の変動が大きいです。
そのため、推移分析は前年以前と比較が重要です。開業した年の場合は、時期による生徒数の変化や集客に対する反応を把握することに集中しましょう。
また、生徒募集だけでなく、経営に無駄がないかの確認も必要です。
広告費や人件費などに無駄な部分が無いか確認しましょう。コストを下げることでの収益率の向上は一番簡単にそして早く結果につながりますので、改善ポイントを正しく把握しておきましょう。
生徒や保護者からのフィードバック活用
生徒や保護者の声の中には経営成功に向けたヒントが隠れています。アンケートや面談を通じた意見収集を行い、課題や要望を取り入れてみましょう。
その時に忘れてはいけないのが改善後の反応です。要望通りに改善してみたが、改善前の方が良かったり、別の改善につながる場合もあります。
改善したから良いということにならない様に注意しましょう。
ネットワーク構築
小規模な塾の場合に多いですが、塾経営に集中することで孤立しやすい傾向にあります。周りから情報が入ってこない状態は経営面で良くないので、同業者や関連業者との情報交換はできるだけ行いましょう。
地域イベントへの参加や協力、学校や自治体との連携などもネットワーク構築には役立ちます。
4.塾経営で失敗する要因:教室経営の落とし穴と対策
事業計画の不備
塾の主な収入源は生徒の月謝です。複数の講師を抱える塾では安定的な生徒数が確保できないと、すぐに赤字になってしまいます。
事業計画は良い状況だけではなく、最悪な状況も想定して作成しましょう。最悪の状況を想定しておかないと、簡単に運営資金は枯渇してしまいます。
事業計画の曖昧さ
塾は地域密着型のビジネスですので、地域や競合についての調査や分析は重要です。この調査や分析をいい加減に行うと、事業計画も実現性のないものになってしまいます。
集客力不足
思ったように生徒獲得ができない場合や、広告に反応が無い場合は、コンセプトや広告メッセージの打ち出し方が間違っているのかもしれません。
広告戦略に誤りがある可能性がありますので、見直しましょう。
■関連記事:【調査データ付き】Web広告からチラシまで!塾広告のメディア別効果と活用法
広告以外の面では、評判・口コミ対策不足が挙げられます。
塾の生徒募集で一番効果があるのが口コミです。塾生や保護者の評価をWebサイトに掲載したり、SNSなどで拡散しやすいように口コミ拡散を狙った施策をしましょう。
人材管理の問題
人材不足や講師の質が低下しない様に定期的な教育や意識合わせは必要です。ただし、それらを受け入れてくれるかは労働環境や給料の影響が強いです。
採用が難しく、離職率が高いのが塾の特徴ですので、講師やスタッフから意見を吸い上げ、働きやすい環境づくりに力を入れましょう。
カリキュラムや教材のミスマッチ
難しすぎたり易しすぎたりで、生徒に合わないカリキュラムや教材になっていないか確認しましょう。宿題の量が多すぎるということもあるかもしれません。
集団型の塾の場合、このあたりの調整は難しいと思いますが、個別指導や小規模な塾の場合は調整ができる筈です。
顧客対応の不十分さ
生徒や保護者との信頼関係構築に失敗している可能性があります。
例えば塾側が努力しなければならない部分を生徒側に押し付けていたり、生徒に合わせたフォローをしていなかったりなど様々です。
不安や不満を持っていても伝えられない人も多くいますので、例えば面談など生徒側が気兼ねなく意見を言える場を作ることで回避しましょう。
まとめ
ここまで、塾の新規開業で気をつけるべき点と運営のポイントをお伝えしてきました。
ビジネスプランの策定が重要であることをお伝えしましたが、地域密着型のビジネスであり、子どもが通う場合もありますので、店舗の立地や周辺環境が、ビジネスプランに影響を及ぼす可能性が十分にあります。
また、法規制が多い分野でもありますので、開業前にしっかりと調査をしましょう。
そして、開業した後は経営計画や運営方法を定期的に見直し、また、生徒や保護者からの声を吸い上げ、改善を繰り返しましょう。
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