デジタル化が進む現代では、学習塾経営においても大きなパラダイムシフトが起こっています。
例えばWeb会議システムを活用してのオンライン学習はコロナ禍に端を発した代表するべき変化と言えます。
この記事では、学習塾経営のオンライン化とICT(情報通信技術)活用のメリットと課題について解説していきます。
デジタル時代の学習塾経営の変化
オンライン学習の台頭
咳や手指衛生等に加え、密閉・密集・密接(3つの密)を避けるように政府から方針が示された、新型コロナウイルス感染症対策の影響により、Web会議システムを活用してのオンライン学習が主流となりました。
コロナ禍では未感染でも通塾を意図的に避けようとする生徒も多く、また、講師やスタッフの健康を守りながらサービス提供を継続するために、オンライン学習を取り入れた学習塾も多くありました。
これまで対面でのサービス提供が当たり前であったところに、半ば強制的にオンライン学習を導入することになったわけですが、オンラインの活用により、時間や地理的制約が大きく緩和され、中には海外からの受講申込みが入るなど、新たな展開が生まれた塾もありました。
しかし、その一方で生徒や保護者との直接交流が減ることでの、安心感や満足度の低下や、授業に集中できない、聞き流してしまう、などの生徒側のデメリットも発生しました。
さらにオンラインでは配信側にも高いスキルが求められるため、講師にかかる負荷も高くなりました。
ICT活用の増加
ICTの活用はコロナ禍以前より進められていて、PCや電子黒板などのICTツールをLANが整備された環境の下で利用している小学校が増えています。ICTツールを活用することで、画像や映像を活用でき、紙の教科書では表現できない内容を授業に取り入れることができます。これにより、生徒の興味や関心を高め、学習意欲を向上させることができます。
小・中学校ではICTツールが活用され始めてから、かなりの時間が経過している地域もあり、今では生徒にとって当たり前のツールや環境になりつつあります。そうした背景から塾でもICTが活用されるケースが増えています。
ここでは代表的なICTツールについて紹介します。
・eラーニングシステム:インターネット上で学習できるシステムで、スマートフォンやタブレットでも利用可能。好きな時間や場所で学習できる。
・オンライン教材:オンラインで教材を配信し、それを利用する学習形態。企業研修や個人の自己啓発にも利用可能。教材は、動画、映像、ドリル型教材など多様。
・学習管理システム(LMS):eラーニングを実施する際のベースとなるシステムで、受講者がログインして学習する受講機能、教員や管理者が受講履歴や成績管理を行う管理機能で構成される。
学習塾経営の新たな方向性
GIGAスクール構想(義務教育を受ける児童生徒のために、1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備する5年間の計画)もあり、ひと昔前とは学習を取り巻くツールの環境が大きく変わってきています。
このような流れは、学習塾の経営戦略・マーケティング・教材などの面でICT対応を考慮する必要が出てきています。
手始めに、どういったツールがあるのか、どういう活用法があるのか?などを調査し、取り入れられるデジタル化はうまく取り入れることを考えてみましょう。
塾業界は変化への適応は決して早い方ではありません。そのため、こういう部分で先行することが、競合との差別化に繋がります。
オンライン化のメリット
コスト効率の向上
オンライン化することで、物理的な教室や教材、設備の維持管理コストを削減できる可能性があります。
真っ先に思いつく授業のオンライン化では、教室という物理的なスペースに縛られる必要がなくなるため、学習塾にとってはコスト面を含めた多くの利点があります。しかし、生徒側はどうでしょうか。運営スタイルや塾の内容によっては、サービス提供に大きな影響や支障が出る可能性があります。このようにオンライン化が双方に及ぼす影響についてしっかり考えましょう。
次に、例えば配布プリントはどうでしょうか。管理システムからダウンロードできるようにするなど、オンライン化することで、印刷コストの削減は簡単にできますし、配布漏れも無くせます。生徒側への影響も殆どなく、どんな内容の塾にも当てはまる効率化です。
手間やコストの削減が出来れば、出来た余裕でサービスを向上し生徒に還元したり、更に多くの生徒を受け入れるなど新たな施策を打つこともできるようになります。そうすることで結果的に競合に差をつけることができます。
アクセシビリティの向上
オンライン化は地理的な制約を無視したサービス提供を可能にします。
前出の様に、最近では海外に対してサービス提供を行っているケースもあり、時間さえ合えば、どこからでも授業に参加することが可能です。
また、映像や音声などを活用すれば、自己学習を時間に縛られることなく、自分の都合で行うことができるようになります。時間が有効に使えるようになるということは、他の習い事や他の予定を組みやすくなるので、生徒にとってもそれを支える家族にとってもメリットが大きいです。
新しい教育技術の導入
従来であれば、講師が各生徒の状態を把握し、個別に対応するなど、属人的だった部分がICTの活用でデータとして管理・分析ができるようになります。例えば、その分析結果を個別にフィードバックすることで、パーソナライズされた教育の提供が実現します。
ICT化することで得られる直接的な恩恵だけでなく、どのようなデータの蓄積がどのタイミングで可能で、それをどのように活用できるのかという視点でもツールを見ておきましょう。そうすることで従来の方法ではできなかった、新しい教育体験の提供が可能となります。
ICT活用の課題
デジタルデバイド
デジタルデバイドとは、ICTを活用できる人とできない人の間に生まれる格差のことを指します。
通塾が難しかったコロナ禍に顕在化しましたが、地域によるインターネット環境やアクセス環境の差が挙げられます。こういった環境面の問題で、すべての生徒が平等にオンライン教育を受講できない可能性があります。
また、ICTリテラシーや慣れの問題もあります。普段からITツールに触れられる環境があったかどうかで差が出てしまう部分ですので、少なからず地域差は存在します。
オンライン教育の制限
利点の多いオンライン化やオンライン教育ですが、効率的である半面、講師と生徒、保護者などとの交流は必然的に少なくなります。
例えば授業面では、生徒は見られているという緊張感がなくなり、ただ授業を聞いているだけ、参加しているだけとなってしまうケースもあり、生徒の学習面の危機に講師が気づけないケースも多くあります。
また、一方的な授業であれば非常に効率的で良いですが、すべての生徒を拾い上げるような目の行き届いた運営をしたい塾の場合は、一度に対応できる生徒数に限りが出てしまうため、経営上非効率になる可能性があります。
まとめ
ここまで説明してきましたように、オンライン化とICTの活用は学習塾経営を効率化することができます。
メリットとしては、コストの削減や、時間や場所などの制限に囚われることがなくなるといったところが挙げられますが、画面やデバイス上でしか生徒の状況を把握できなかったり、インターネット環境の地域差などの問題点も同時に挙げられます。
総合的に考えた場合、授業に関連する部分のICT化は状況次第ではデメリットとなる場合があるのに対して、学習塾の運営や管理面でのICT化は生徒への影響も少なく、学習塾のコスト削減に繋げられるケースも多くメリットがあるため、管理ツールの導入からスタートするのがおすすめです。
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