はじめに
塾やスクールを経営する上では特定商取引法の存在を意識する必要があります。
特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とした法律で、 具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生じやすい取引類型を対象に、事業者が守るべきルールと、クーリング・オフ等の消費者を守るルール等を定めたものです。
このルールは、塾と生徒間で締結する契約書などにも影響するものとなっているため、塾の契約業務が複雑且つ煩雑化している原因にもなっています。
この煩雑な塾の契約業務は電子化することで、簡易化できますが、特定商取引法では電子化するためのルールが細かく定められていて、単純に電子化するだけでは対応できませんので、注意が必要です。
そこで、本記事では、塾と生徒との契約書の電子化について解説していきます。
特定商取引法の規制対象となる取引類型
経営する塾やスクールの取引類型が以下のどれに該当するのかを正確に確認しましょう。
- 訪問販売:事業者が消費者の自宅等に訪問して、商品や権利の販売又は役務の提供を行う契約をする取引のこと。
- 通信販売:事業者が新聞、雑誌、インターネット等で広告し、郵便、電話等の通信手段により申込みを受ける取引のこと。 ※「電話勧誘販売」に該当するものを除く
- 電話勧誘販売:事業者が電話で勧誘を行い、申込みを受ける取引のこと。
- 特定継続的役務提供:長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引のこと。
- 訪問購入:事業者が消費者の自宅等を訪問して、物品の購入を行う取引のこと。
- 連鎖販売取引:個人を販売員として勧誘し、更にその個人に次の販売員の勧誘をさせる形で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品(権利)・役務の取引のこと。
- 業務提供誘引販売取引:「仕事を提供するので収入が得られる」という口実で消費者を誘引し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金銭負担を負わせる取引のこと。
塾やスクールの場合、特定継続的役務提供、に該当するケースが多いと思います。それ以外では、通信販売・電話勧誘販売が該当するケースがあります。
例えば、申込みから受講までの全てがオンラインで完結する塾やスクールの場合は、通信販売に該当する可能性が高いでしょう。また、広告やチラシやパンフレットを利用し電話やWeb会議を活用した勧誘は、電話勧誘販売に該当する可能性があります。
このように集客施策と特定商取引法の規制は深く関連していますし、その施策がどの取引類型に該当するのかの判断は一般の方には難しいので、弁護士など専門家に確認しながら施策の決定と特定商取引法への対応を行うようにしましょう。
特定商取引法が定める義務
ここでは、特定商取引法が定める代表的な義務について紹介します。
書面交付義務
例えば、特定継続的役務提供が該当する場合は、概要書面や契約書面を交付する義務があります。
また、書面に記載するべき項目や情報についても細かく指定があり、この書面交付義務が塾の電子契約化を難しくしています。
なお、通信販売には書面交付義務がありませんが、広告に必要事項を表示するか、消費者からの請求があった場合に「遅滞なく」提供する必要があるなど、取引類型ごとに決まりがありますので確認しましょう。
クーリング・オフ
取引類型により規制内容が変わりますが、特定継続的役務提供にはクーリング・オフの適用があります。
契約書面への記載ルール(文字の色や文字サイズ)が決められている場合もありますので、ルールに従った書面を作成しましょう。
※通信販売はクーリング・オフ制度の適用がありません。
上記以外にも、禁止行為などについても細かく定められていて、守らない場合、行政処分・罰則の対象となるため正しく理解し、対応する必要があります。
電子契約書の導入
特定商取引法に該当しない塾の場合
特定商取引法に該当しない塾の場合は、契約書について、特に規制はありません。
しかし、電子契約の場合、対面で契約行為が行われないことから、契約行為をしている人物が契約書の内容を理解しているのかがわかりづらくなります。
そのため、契約書の内容をできる限りわかりやすいものとし、かつ、契約内容をきちんと理解したうえで、契約に及んでいるかを確認すること(確認できる仕組みを設けること)が重要になります。
特定商取引法に該当する塾の場合
通信販売以外の取引類型に該当する塾の場合、契約書を電子化するためには上記のフローを踏む必要があります。
例えばフロー左側の「電磁的方法の種類及び内容の提示(規則第9条)」については、
「規則第9条 令第4条第1項の規定により示すべき電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げるものとする。
一 前条第1項に掲げる方法のうち、販売業者又は役務提供事業者が使用するもの
二 ファイルへの記録の方式」
と記載されており、令第4条第1項の規定が何を指すかと言えば、
「事業者は、主務省令で定めるところにより、あらかじめ、消費者に対し電磁的方法による提供に用いる電磁的方法の種類及び内容を示した上で、契約書等に記載すべき事項の電磁的方法による提供を行うに当たっての承諾を得なければならない。(政令第4条第1項)」
となります。
具体的にどのようなことを行えばよいのか、すぐには理解できないような書き方がされていますが、特定商取引法に該当する塾の場合の電子化は大変そうであるということは理解できるのではないかと思います。
まとめ
このように特定商取引法に該当する塾の場合、電子契約を導入するためには、複雑なフローを正しく実施する必要があり、一般の方にはハードルが高いといわざるをえません。
それでも電子化したいということであれば、専門家の手助けが必須と思われます。
SCHOOL MANAGERでは塾やスクールの契約書の電子化をサポートしています。
電子契約機能を用意していますので、特定商取引法に該当しない塾はもちろんのこと、特定商取引法に該当する塾の生徒との契約書の電子化を実現できます。電子契約の導入で、煩雑な契約業務や管理の改善や、印刷コストの抑制が期待できます。
紙の契約書の管理・運用でお悩みの方や、電子契約機能の導入をお考えの方はお問い合わせください。
また、特定商取引法への該当の有無が分からない場合や、その他法律関連の問題が発生した場合、問題が起きそうなとき、さらには、問題の発生を予防したい場合など、お気軽にご相談ください。
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