スクールや教室、塾の経営面の都合や、多忙を極める子どもたちのスケジュール面の都合など総合的に考えた場合に、ひとつの選択肢としてオンライン化が挙げられます。
生徒は時間や場所に影響されず受講でき、先生も授業に関わる工数の削減が可能になります。
しかし、メリットばかりだけではありません。
今回はオンライン化のメリットやデメリットを考えながら、オンラインレッスンの取り入れ方を紹介します。
1.オンラインレッスンのメリット
スクールや教室、塾にオンラインを取り入れることのメリットは、運営コストを抑えられるという点が挙げられます。
教育事業は生徒が入る箱、いわゆる部屋や会場が必要です。
しかしオンライン化にすることで、自宅にいながら生徒に教えることができるようになるなど、部屋や会場を借りる必要がありません。
これは教室運営者にとっては大きなコスト削減になります。
また、講義を録画しておくことで、先生が講義をしなくても授業が行えるサテライト授業も可能になります。
生徒は時間を問わず授業を聞くことができますし、繰り返し視聴することもできるので、対面での授業よりも便利な面もあります。
また、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行により、感染予防を考えた場合の運用としてオンラインはとても有効ですし、スクールや教室、塾ができる感染症対策の施策としては、オンライン化しかないとも言えます。
2.オンラインレッスンの2つのスタイル
スクールや教室、塾が取り入れるオンラインレッスンには2つのスタイルが有ります。
1つ目は配信系、2つ目は録画系です。
▼生配信
zoomやTeamsなどのWeb会議システムを利用してリアルタイムで指導するスタイルです。
メリットとしては会話をしながら指導ができるため、対面レッスンに近い形になります。
デメリットは、一度に多くの生徒を受け持つことができない点です。
例えば対面レッスンであれば、生徒は教室の雰囲気や隣の生徒など様々な状況を見ながら講師と話すチャンスを伺えますし、講師もそういった仕草から、話しかけたそうな生徒に気づくことができます。
しかし、複数人が参加するオンラインレッスンでは、会話は基本的に1対1で行われます。
そして講師は対話中の生徒に集中するため、生徒個々の様子まで把握することが難しく、話しかけたそうな生徒にも気づけず、生徒側からのアクションがないとそのまま授業は進んでいってしまいます。
また、生徒もそうならないようにと他のことはせずに、対話が終わるのを待つため、画面に集中するようになります。結果として講義中にもかかわらず、何もしていない時間ができてしまいます。
▼動画コンテンツの配信
講義を録画したものや、独自に作成したレクチャー動画を配信する指導方法です。
大手予備校などでもサテライト授業として取り入れられている手法です。
このスタイルのメリットは何度でも繰り返し見ることができるので、内容により反復練習ができます。貴重な講義などの場合も、映像として残しておき何度でも配信することができます。
この繰り返し配信では、講師の時間は一切使わないため、コストや工数の削減が実現できます。
しかし、視聴している生徒の様子が一切わからないため、後日生徒へのヒアリングや、生徒からのアクションが無い限り、なかなか生徒の状況をキャッチできないというのがデメリットになります。
3.オンラインレッスンの具体的な作り方
それではオンラインレッスンを取り入れるにあたり、必要なものを確認していきましょう。
▼用意するもの
- PCまたはスマホなどの配信端末
- Web会議システムや動画配信システムなどの配信用ツール
- 決済システム
- 生徒を集める
▼スタイルを決める
前述の通り、オンラインレッスンには2つのスタイルがあります。
「生配信」と「動画コンテンツ配信」です。
どちらのスタイルでオンラインレッスンを実施するのかを決めましょう。
▼教室の場所(配信ツール)を決める
【生配信ツール】
・zoom
操作方法が簡単。無料プランでは最大40分までのグループミーティング。
・Teams
Microsoftの各種ツールと連動できるので便利。操作や設定には慣れが必要。
・Skype
無料で利用可能。操作方法が簡単。無料は商用利用禁止。
【動画コンテンツ配信ツール】
・YouTube
無料で利用可能。限定配信も可能。
・Vimeo
非公開設定が可能。有料。
▼決済システム
教室運営の肝となる授業料の収納についてですが、どういったスタイルで行うかを決める必要があります。
銀行振り込みにするのか、口座引き落としか、決済システムを利用してクレジットカードでの支払いを受け付けるのかなどです。
例えば動画コンテンツの配信を行う場合は、専用のサイトないし、スクールサイト内に閲覧できるページを作成する必要があります。閲覧期間での課金を行いたいのであれば、決済機能とスクールサイトを連動させる必要が出てきます。
■関連記事:実際の自宅教室担当者が語る、自宅教室でよくあるトラブルと対策・解決策:「レッスン料収納が円滑にできるシステムやサービスを導入する」
▼生徒を集める
すべての準備ができましたら生徒の集客について考えていきましょう。
サービスの対象となるユーザはどういった人物で、普段どういった媒体を見ているのかなどです。
例えばSNS集客であれば基本的に費用は掛かりませんが、影響力はフォロワーの数に依存します。フォロワー数が多ければ多いほど良い結果が得られるでしょう。
しかし、フォロワーが少なければ広告をかける必要が出てくるなど、費用をかけての集客の可能性もあります。
その他にもSEO集客、口コミ、チラシなど様々な施策の中から最適なものを選択し実施していきましょう。
■関連記事:効果的な塾・スクールの集客方法徹底解説|実際の生徒集客成功例を紹介
4.オンライン教室の課題
コスト的なメリットの多いオンラインレッスンですが、課題や注意点がいくつかあります。
始めてみてから想定外だったとならない様に課題や注意点について考えていきましょう。
▼オンラインレッスンの環境
まず、重要なのはインターネット回線の強度やPCのスペックです。
回線状況が悪ければ生徒は快適にオンラインレッスンを受けることができずに、サービスを継続利用しなくなります。
そこでオンラインレッスンを行うために必要な機材類について解説していきます。
・回線
光回線を使いましょう。
インターネット回線にはマンションタイプと戸建てタイプがあります。
戸建てタイプは、一軒家に直接回線を引くのに対して、マンションタイプは全部屋で回線を共有する形になりますので、速度は大きく異なります。
また、マンションタイプには築年数に応じて設備の古いものも多いです。
オンラインレッスンを行うマンションが、どういったタイプの設備を搭載しているのかの調査を行い、回線速度の確認なども行いましょう。
マンションタイプで回線が遅かった場合、マンション内に戸建てタイプの回線を引くことは可能な場合があります。回線を勝手に引くことはできませんので、まず管理会社に相談してみましょう。
・PC
そもそも動画は映像データと音声データの2つに分かれています。この2つが揃うことで動画となり視聴できるようになるわけです。
この揃える処理をエンコードと言い、映像を配信する場合はこのエンコード処理が必要になります。
オンライン配信の場合、このエンコード処理はソフトウェアで行うソフトウェアエンコードとハードウェアで行うハードウェアエンコードの2つに分かれます。
ソフトウェアエンコードはCPUで処理されるのに対して、ハードウェアはグラフィックボード(グラフィックビデオカード)で処理されます。
つまり、ハードウェアでエンコード処理ができればCPUはほぼ使われないため圧倒的なパフォーマンスで配信が可能になります。
つまり、オンラインレッスンで使用するPCはグラフィックボードが入っているものを用意しましょう。
・配信ツール
配信ツールがグラフィックボード処理に対応していなければ、グラフィックボード入りのPCを用意しても意味がありません。
Web会議システムなどの配信ツールがグラフィックボード処理に対応しているのか確認しましょう。
・カメラ
WebカメラなどカメラにUSBがついているカメラ以外で配信する場合は注意が必要です。
そもそもPCにカメラからの映像を直接入力することは、できない場合が多いです。
そういう場合はPCとカメラの間に、ビデオキャプチャ(コンバータ)を挟みましょう。
コンバーターは例えばHDMI形式でカメラから出力された映像を、コンバーターへ入力し、コンバーターからはUSB形式で出力することでPCへの入力が可能になります。
▼対面よりも伝わりにくい
オフラインと比較して、オンラインの方が生徒とのコミュニケーションは取りにくくなります。
伝えにくい場面も出てくることも良くあります。
例えば、手元動作が重要になるレッスンの場合、書画カメラを利用する必要が出てきます。
場合によってはホワイトボードなど、先生が自由に書けるツールを用意する必要も出てきます。
生徒にうまく理解させられない場合の対策もしっかりと用意しておく必要がありますし、オフラインに比べて、教える力は高いものが必要になります。
逆に言えば、オンラインレッスンに取り組んでいる先生や教室は、教えるのがうまい可能性が高いとも言えます。
5.オンライン教室の種類
オンラインレッスンは塾、家庭教師、ヨガ、トレーニング、占い、経営コンサル様々な業種で導入できます。
そのため、開催・運営手法などに悩んだら、他の業種のオンラインレッスンを参考にしてみることも重要です。
オフラインでの開催や運営を考えている方も、一度オンラインレッスンを検討してみてはいかがでしょうか。中にはハイブリッド式ということで、オフラインとオンラインを融合した形で運営しているケースもあります。
オフラインだからこそ、伝えられたり身につく能力があり、オンラインにはオンラインだから身につく能力があります。
6.オンライン教室は今後増えてくる
一番大きいのは新型コロナウイルス感染症による影響ですが、その結果オンラインレッスンの導入や移行を行うスクールや教室、塾が増えています。
試行錯誤しながら運用する中で、生徒側もオンラインレッスンに慣れ始め、またメリットも感じ始めています。
実際にこれまでオフラインで通っていたスクールがオンライン化しないことを理由に、遠くのオンラインレッスンを行うスクールに入塾するといった事例も増えてきています。
オンラインでは距離が関係なくなりますので、時間さえ合えば海外の生徒を持つことも可能です。
何も海外にいるのは外国人だけではありません。
転勤など海外で暮らす日本人も多くいます。
スクール経営者や講師にとって、新たな取り組みとなることの多いオンラインレッスンですが、教える科目や内容により、機器類を含め様々な障害が発生すると思います。
そういった体験を通じて、改善を施し、良質なオンラインレッスンを作り上げていく必要がありますので、できるだけ早く取り組み、まずオンラインレッスンに挑戦してみることが大切です。